君と、ゆびきり
☆☆☆

院内はいつもより騒がしかった。


卒業証書を握りしめたままのあたしはその騒がしさに嫌な予感を覚える。


早足で風の病室へと向かう。


いつも通りノックをしようとしたところ、風の担当をしている看護師さんに声をかけられた。


どうやら風は病室をかわったらしい。


看護師さんに連れられてきたのは一番奥の個室だった。


人通りが少なくてとても静かな場所。


あたしはいつものようにノックをしようかと思ったが、その直前に泣き声が聞こえて来て動きを止めた。


この声は……風のお母さん?


嫌な予感は的中する。


そんなもの、的中しなくてもいいのに。
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