君と、ゆびきり
「千里ちゃん来てくれたのね! よかった! よかった!」


風のお母さんは泣きながら笑っていた。


とても嬉しそうに笑っていた。


どうしたんだろうと思い、病室の中を覗き込む。


そこには沢山の医師が集まり、風を取り囲むようにして立っていた。


「これ、どういうことですか?」


あたしは状況が理解できなくて、お母さんにそう聞いた。


「新薬ができたのよ! 今度の薬は風の病気が治る可能性が高いって!」


「え……?」


思いもよらぬ言葉にあたしは目を見開いた。


だって、あたしはてっきり……。


ベッドに横になっている風と目があった。


風は笑う。


ふわりと、人を包み込んでしまうように優しく笑う。


未来が、変わった……?


風のお母さんはすごく興奮して、嬉しそうで、「千里ちゃんに飲み物を買ってあげるから」と言って走って行ってしまった。


あたしはその後ろ姿を見送り、病室に足を踏み入れた。
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