君と、ゆびきり
☆☆☆

半ば強引に大阪行きが決定した帰り道。


あたしと玲子はゆっくりと家に向かって歩いていた。


太陽はまだ高い位置にあり、慌てて帰る必要もない。


「千里、本当は好きな人がいるんじゃない?」


2人でなんとなく立ち寄った公園のベンチで、不意に玲子がそう聞いて来た。


あたしは驚いて玲子を見る。


玲子は少しだけ笑顔を浮かべてあたしを見ている。


「……なんで?」


あたしはそんな質問を玲子に投げ返していた。


公園内で遊んでいる子供たちの声があちこちから聞こえて来る中、玲子は首を傾げてあたしを見た。


「だって、男の子の話になるといつも急に無言になっちゃうでしょ? 単純に男嫌いだから触れられたくない話題なのかなって思ってたんだけど、そじゃないとすれば、その逆なのかなって思って」


つまり、好きな人がいるのかなって思って。


玲子はそこだけ小さな声になって言った。


あたしは玲子の言葉を頭の中で反復させた。
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