君と、ゆびきり
好きな人。


好きな、人。


その言葉が胸のあたりにひどく引っかかる。


なにか思い出せそうなのに、なにを思い出そうとしているのかわからない。


「いないよ」


結局あたしは胸の引っ掛かりを取る事なく、ため息と共にそう答えていた。


「そっか、いないのか」


玲子はがっかりしたように肩を落としてそう言った。


「なんでそんなに残念そうにしてるの?」


「だって、もうすぐ卒業だよ? 好きな人がいるなら告白とかで盛り上がれるじゃん」


玲子の言葉にあたしは一瞬黙ってしまった。


あたしの好きな人、イコール同じ学校の人と思われてもそれは仕方がないことみたいだ。


大抵みんな好きになった人は同じ学校の人だったし、そういう流れはごく自然のことだ。


「残念」


あたしがそう言うと、玲子は小さく笑って空を見上げたのだった。


つられて見上げてみると、今日の空はとてもよく晴れているのになぜだか今にも泣き出してしまいそうに見えたのだった。
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