君と、ゆびきり
☆☆☆

修学旅行の2日目は時計台の見学だった。


目的地へ近づくにつれて自分たちと同じような卒業旅行生の姿が多く目につくようになってくる。


「もっと早い季節にしてくれればいいのに」


白い息を吐き出しながら玲子が文句を言う。


確かに。


北海道が行先ならもう少し暖かい時期に連れて来てくれた方が助かったのに。


あたしは玲子の意見に100%の同意を見せた。


今日は幸い雪が降っていなかったけれど、辺りはほんのり白くなっていた。


昨晩の内に少しだけ降ったのが溶けていないのだ。


「まぁいいじゃん。3年生に上がったらこんな呑気に旅行なんてできないんだから」


明るい声でそう言ったのは和美だった。


「受験や就職の話?」


あたしがそう聞くと和美は頷き、そして左右に首を振った。


「半分正解。半分不正解」


「半分?」


また聞くと和美はニッと白い歯をのぞかせて笑った。


「あたし、3年に上がったら生徒会長に立候補する予定にしてるんだ」


「うそでしょ!?」


そう言ったのは玲子だった。


生徒会長なんてそんな面倒くさい事、どうしてやりたのだろうとあたしは首を傾げた。


「本気だよ。だってさ、全校生徒の事を考えて行動するのってすごくリーダーっぽくない?」


和美は目を輝かせてそう言った。


まぁ、確かにリーダーなのだろうけれど、たったそれだけの理由で憧れるのはよくわからなかった。
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