君と、ゆびきり
「今日で卒業だねぇ」


数分間無言で歩いていると、あたしの右側を歩いていた玲子が呟くほど小さな声でそう言った。


「そうだね」


あたしはも同じように小さな声で返事をした。


玲子はチラッとあたしの方を見て、笑顔を浮かべる。


「だけど、あたしと千里は同じ大学だから」


「うん。またいつでも会えるね」


「みんなは……」


そこまで行って、玲子は口を閉じて空を見上げた。


同じように上を向いてみると、真っ白な飛行機雲が見えた。


「あっち側にいっちゃう人もいるね」


玲子は飛行機雲の右側を指さしてそう言った。


「あっち側って?」


「簡単には会えなくなっちゃう側」


こちから見て飛行機雲の右が会えなくなる人で、左側があたしたちのいる側ということらしい。


あたしは頷き、視線を前へ戻した。


真上を向いていたから少し首が痛い。


「でも、完全に会えなくなるわけじゃないし」


「うん。そうだね」


玲子はまだ飛行機雲を眺めている。


もう1度だけ顔を上げて見てみると、飛行機雲は風に流され右と左の境界線があやふやになっていた。
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