君と、ゆびきり
せっかくの修学旅行で体調を崩してしまうなんて、なんてついてないんだろう。


きっとそんな思いが強かったんだろう。


あたしは夢の中で時計台を見ていた。


それはついさっき見ていたものと全く同じで、出て来る人物たちも全く同じだった。


おまけに和美が生徒会長になると言い出し、玲子に冷静に突っ込みを入れられている。


ここまでそっくりそのまま夢に出て来るなら、この後の行動も全く同じなんじゃないの?


夢の中にいる自分にそう訊ねた次の瞬間、場面が切り替わって旅館に戻ってきていた。


あたしは薬を飲み、1人で部屋に横になる。


あ~あ、ほらね、全く同じだ。


どうせならみんなと一緒にいられなかった部分が見たかったのに。


夢の中へ向けてブツブツと文句を言ってみても何も変わらない。


あたしは眠っている自分を見おろしている状態になってしまった。


これってなんだか幽体離脱みたいじゃない?


そんな事を考えて1人でクスッと笑う。


それにしても深く眠ってしまったようで、夢の中のあたしは軽く寝返りをうつくらいでほとんど動かない。


修学旅行でよほど疲れていたんだろうな。


そんな風に感じた時、人の気配を感じて視線を向けた。
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