君と、ゆびきり
旅館の方たちの調べによると、犯人の男はこの旅館のライバル店の息子だったそうだ。


息子からの嫌がらせは毎日のようにあったけれど、いつもはイタズラ電話程度のものだったらしい。


徐々にエスカレートしていくかもしれないという予感から気を付けていたものの、突然豹変したそうだ。


なぜ今日に限ってそんな事になってしまったのか詳しく話を聞いてみると、どうやら男は両親と些細な喧嘩をした後だったらしい。


たまった不満をライバル店へぶつけに来たのだ。


話を聞いたあたしは大きく息を吐き出した。


すべての偶然が重なり合ったがために、大変な事に巻き込まれる所だったのだ。


そう思うと恐怖で震えた。


夢で見ていなかったら一体どうなっていたのか、考えるだけでも恐ろしかった。


でも……。


あの夢が予知夢だとはどうしても思えなかった。


なぜ？


と聞かれると理由はわからないけれど、あの夢はやけにリアルだった。


まるで１度経験した事をそのまま再生されたような、そんな感じだった。


なにはともあれ、なにもなくてよかった。
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