君と、ゆびきり
「あたしは千里、よろしくね真弓」


『真弓』


自分の口がそう動いた瞬間、胸の奥がジワリと熱を帯びたのを感じた。


懐かしい。


そう表現するのにピッタリな感情が湧き上がって来る。


「お、すぐに呼び捨てにしてくれるなんて嬉しいなぁ! じゃぁ、あたしも千里って呼ぶね」


真弓はそう言い、手を差し出してきた。


あたしはその手を握り返す。


なんだろう、この感覚。


はじめて会ったばかりなのに懐かしいと感じている自分に戸惑う。


それに、あたしは初対面の人をいきなり呼び捨てにするような事はできない。


できないはずなのに、なぜだか当たり前のように『真弓』と呼んでしまった。


何の違和感もなく。


今までそうやって呼んできたかのように。
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