君と、ゆびきり
だって、せっかく第一志望に合格したのに勉強についていけずに遊べない。


なんてことになったら辛いもん。


ため息を吐き出し、気を取り直して制服を身に着けた。


その時だった。


今度は聞こえた。


ハッキリと、少女の声が


『まだ思い出せないの? また守れなかったの?』


それはまるで部屋全体がトンネルになってしまったように、あちこちから反響して聞こえて来た。


聞いたことがある声。


だけどそれが誰の声なのか思い出せない。


あたしは必死で部屋の中を見回した。


人が1人隠れているスペースなんてほとんどない。


クローゼットの中も、鏡の後ろにも誰もいない。


「幻聴……?」


もう聞こえなくなった声に、あたしは小さくそう呟いたのだった。
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