君と、ゆびきり
「わからない。あなたは誰?」


あたしは一歩後ずさりをして少女へそう聞いた。


少女はあたしの答えが不満だったのか、頬を膨らませている。


「あたしはあなた。あなたはあたし。忘れちゃったの?」


何を言っているのだろう?


またメマイを感じてあたしは頭を押さえた。


少し気持ち悪さもある。


「メマイがひどいの?」


そう聞かれて、あたしは少女を見た。


教室にはもうあたししか残っていない。


この少女の事は誰にも見えていないようだし、あたしも早く行かなきゃ……。


そう思うのに、体は思うように動かない。


少しでも動こうものなら、倒れてしまいそうだ。


あたしは机に手をついてやっとの思いで自分の体を支えていた。


「あなたが思い出さないからそんなに苦しいんだよ」


「あたしは何を思い出せばいいの?」


そう聞くと少女は歯をのぞかせて笑った。

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