君と、ゆびきり
☆☆☆

海までは電車で1時間ほどだった。


電車内ではボックス席に座り、お菓子を広げてパーティーをした。


途中で駅弁を買って食べて、記念に写真も撮って。


バカみたに大声で笑ってしまって乗客のオバサンに睨まれた。


そのどれもが輝いて、楽しくて、1時間なんてあっという間に終わってしまった。


「綺麗……」


海を間近で見た瞬間、あたしは立ち止まってそう呟いた。


「千里って、海に来たら必ずそう言うよね」


玲子が笑いながらそう言って来た。


「だって……」


あたしは幼い頃、海にも来たことがなかった。


こんなに近くにいるのに、浜辺ではしゃいでしまうからと連れて来てもらえなかったのだ。


「わかってるって。今年は思いっきり遊ぼう!」


玲子がそう言い、あたしの手を掴んで浜辺へと駆けだした。


砂浜に足を取られながら歩く砂浜には、貝殻で輝いて見えた。
< 63 / 226 >

この作品をシェア

pagetop