君と、ゆびきり
少女はあたしと視線を合わせると、口の端を上げて笑顔を浮かべた。


可愛らしいけれど、どこか冷たさを感じる笑顔に背筋がゾクリと寒くなる。


「まだ、思い出さない?」


少女の言葉にあたしは戸惑い、視線を逸らせた。


「思い出すって、なにを?」


あたしと少女はこれが初対面のはずだ。


それとも、実はどこかで会っていて、なにか約束でもしていただろうか?


小学校の頃病院通いをしていたから、その時に会った子だろうか?


記憶をたどっていくものの、思い出すことができない。


赤いワンピースを着た子がいたなら、きっと印象に残っているはずだ。


「残念だよね。忘れるって」


少女はあたしの問いかけに答える事なく、そんな事を呟くと人波に紛れて見えなくなってしまったのだった。
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