君と、ゆびきり
花火がよく見えないと文句を言われるのかと思ったが、そこにいた人物にあたしは息を飲んだ。


暗い中でもハッキリと見える真っ赤なワンピース。


「あなた……なんで?」


少女が近所の子供だとすれば、今ここにいても不思議ではなかった。


だけど、今回も保護者らしき人の姿がないのだ。


近所だと言ってもこんな時間に1人で外出させるとは思えない。


「花火がよく見える場所があるんだけど、一緒に行かない?」


質問しながらも、すでにあたしの手を掴んでいる少女。


その手は驚くほどに冷たい。


そう、本当にこの世の者ではないような体温なのだ。


あたしはすぐに掴まれた手を引っ込めようとした。


が、できなかった。


怖いのに、この手はふりほどくべきじゃないと、心が言っている。


はじめて会うはずの少女なのに、どこか懐かしさも感じられた。


気が付けば、あたしは少女に手掴まれたまま歩き始めていた。


友人たちに一言も告げずにだ。


これは一体なんなんだろう?


なんでこんな事をしているんだろう?


疑問が浮かんでくるが、体を止める事ができない。


ついていくべきだ。


心がそう言っているようなきがしてならない。
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