君と、ゆびきり
小さな子たちと一緒に楽しいイベントをしたい。


だけど、その半面で学校の友人たちと遊びたいという気持ちもあったのだ。


長い間クリスマスを病院で過ごして来たあたしは、友人たちと過ごすクリスマスを経験した事がなかった。


それが、体調が良くなってからはみんなと同じように遊びに出かけられるようになり、今年は玲子の家でパーティーをしようと誘われているのだ。


「無理に行く必要はないからね?」


困っているあたしを見て、お母さんがそう声をかけてきた。


「千里は今まで遊ぶことを我慢してきたんだから。行きたい方を選べばいいの」


「そうかな……?」


病院内から出ることのできない子供たちの事を考えると、どうしても胸のあたりがモヤモヤしてきてしまう。


あたしも、入院をしていた頃があった。


あの頃は外で遊んでいる子たちが羨ましくてしかたなかったんだ。


その子たちが時々院内に遊びにきてくれると、とても嬉しかったのを覚えている。


きっと、みんなあたしが来るのを待っている。


「そうだ。今年はお母さんが病院のパーティーに参加しようかな」


ふと思いついたようにそんな事を言い出したお母さん。


「え? お母さんが?」


「そうよ。お母さんもたまには外で遊びたいもの。そうだ、お父さんも一緒に連れて行きましょう。それがいいわ!」


パンッと手を叩き、満面の笑顔を浮かべて部屋を出ていくお母さん。


その後ろ姿を見送って、あたしはホッとしてほほ笑んだのだった。
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