君と、ゆびきり
「今日はあまりいい天気じゃないね」


玲子は空を見上げてそう呟いた。


「そうだね。でも明日は晴れるって」


自分でそう言った瞬間、目の前に晴れ渡った空が見えた気がしてあたしは目をこすった。


よく晴れた空に白い飛行機雲が走っている映像が見えた気がしたけれど、相変わらず空はどんよりと曇ったままだ。


「どうかした?」


玲子にそう聞かれてあたしは「なんでもない」と、左右に首を振った。


きっときのせいだ。


2人で他愛もない会話をしながら教室に入ると、生徒会長の和美が手を振って来た。


「おーい2人とも! 明日はデジカメとスマホ忘れないように持って来てね」


「デジカメ?」


スマホはいつも持ち歩いているけれど、デジカメを学校に持って来たことはない。


「そう。明日は卒業式! 写真OKらしいから、バンバン撮るよ!」


元気いっぱいの和美の言葉にあたしは納得した。


あぁ、そういうことか。


明日だけはデジカメやスマホをいくら使っても怒られない日らしい。


「それでさ、3年C組のみんなで集合写真撮ろうよ! 最後の想い出!」


「そうだね」


あたしはそう返事をして、一瞬違和感を覚えた。


「ねぇ、こんな会話、前にもしなかった?」


あたしは誰ともなくそう訊ねる。


クラスメートたちの顔を順番に見ていくと、最後に隣に立つ玲子と視線がぶつかった。
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