拾われた猫。Ⅱ




着いた先は道場の裏側だった。



気配を消して、建物の影からそっと覗く。




「ゴホッゴホゴホッ……ゴホッ……ガハッ…!」


苦しそうに壁に手を付き、前のめりになっていた。



地面にはポタポタと血が垂れていた。




「総司…!」



見ていられずに、その背中に追いつく。



肩で息をしながら、顔をゆっくりと上に上げる。




「雨…ちゃん…………、何でいるの?」



作り笑いをする余裕もないのか、冷たく睨みつける。


その瞳の奥には怯えが少しずつ見え隠れする。





「苦しいんでしょ?

今、誰かを……」


動き出そうとする私の腕を掴んだ。



力強い腕に私の言葉は止まり、振り払うことも躊躇わせた。



「誰にも言わないで…」



縋りつくような声に、表情。


< 121 / 305 >

この作品をシェア

pagetop