拾われた猫。Ⅱ
本当は、「言ってる場合じゃない」って振り払うのが正解なんだろう。
「……分かったから」
それでも未来を知る私には、そんな残酷な事は言えなかった。
総司の腕を自分に回し、階段のところに座らせる。
私も横に座ると、総司は私と真反対の方の頭を寝かせる。
いつもの総司なら、必要以上に引っ付いてくるはずなのに。
「…僕、労咳なんだってさ」
「っっ…」
総司の笑い声が乾いていた。
鋭い総司は私の小さな息にも気づく。
なのに今は……気づかなかった。
そう言えば、私の気配にも気づかなかった。
ある程度近づいたら気づくはずなのに、目の前に来るまで気づいていなかったらしかった。