拾われた猫。Ⅱ



和らいでは激しく、痛みが私を襲う。




「…ぅっ……」



小さな声が漏れる。



いっそのこと気絶出来れば楽になるのだろうか。



慌ただしい足音が聞こえる。



それは私の前で止まった。




「雨!!!」



大きな叫びに抱き寄せられて、温かい温度に包まれた。



眉間に皺を寄せた平助の顔が薄らと目に映る。



思っていたよりも力強い腕で横抱きにされて、道場を出た。



不思議だ。

私よりも少し高いだけなのに、私を抱える程の力があるんだ…。


そういえば左之も私を軽々と持ち上げていた。



フワフワと心地よく揺れる腕の中で、私は意識を手放した。




< 145 / 305 >

この作品をシェア

pagetop