拾われた猫。Ⅱ
永倉新八が千鳥足で自室へ帰ったあと、また縁側に出て、夜空を眺めていた。
「…満月じゃねぇな」
少しの思い出ともどかしい気持ちが、酒を口に運ばせる。
──…帰らないよ
以前彼女が言った言葉を、頭の中で反芻する。
彼は自分の手を見つめた。
「細ぇよな…あいつ。
強いくせに」
クスリと笑って、また酒を煽る。
早く会いたい…。
彼の中を占めるのは今はこの思いだけであった。
〝帰らない〟。
ただそれだけの口約束が、彼の心を支えていた。