拾われた猫。Ⅱ



胸が苦しくて、熱くて。

喉の奥がジリジリ痛い。




胸がいっぱいになる。

人はよくそういう表現を使う。



きっとこんな感じなのだろう。



私が知らなかった全部を教えてくれる。



「にゃぁぁ〜」



高らかな声に弾かれるように現実に戻される。



手を差し出してくれる2人にギュッと握り返す。



「私は…こういう所初めてでよく分からないから。

…2人が色々案内してくれる?」



ぎこちなくそう言った私に微笑んだ彼らは、手を引いて連れて行ってくれた。




お面、飴細工、風車など、色とりどりの世界が目を楽しませてくれる。



初めて食べた綿菓子は、口に入れると甘い感覚だけ残してなくなってしまった。



驚きに目を丸くしていると、お腹を抱えるように彼らは笑っていた。



今まで祭りなどには縁がなく、入ることすらなかった。



こんなに楽しいものだったなんて…。




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