拾われた猫。Ⅱ
「俺なら動ける」
冷静すぎる程の声は沈んだ空間に広がった。
驚きの表情をこちらに向ける周りよりも、鋭く尖った視線に目を向ける。
「…香月、お前は言ってる意味を分かって言ってんのか?」
ギラリとした瞳は奥の奥で揺れる不安を必死に隠していた。
見抜いてしまえば、もう逸らすことなんか出来ない。
小さく息を吐いて、言葉を続ける。
「俺は生憎ここの人じゃないことになってる。
今動けるのは、俺だけだよ」
一瞬だけ口角を緩ませた私に、気づいたのか、トシは眼光が濁った。
「…それって、君が新選組を抜けるってことだよね?」
項垂れるように垂れ下がる頭が声を発した。
私とトシは敢えて反応しなかった。
それが…答えだからだ。