拾われた猫。Ⅱ
「なら…俺も行く」
意外な声に、私たちはゆっくりそちらを見た。
「仲間の危機で、雨が抜けなきゃいけないくらいの事で、…でもそうしたら、雨が……危ないんだろ?
それくらい俺にだって分かった…」
静かな悲しみが漂い、誰も口を開かず、平助の声を聞いていた。
「雨も…新選組の仲間だろ…?
誰かの為に誰かが犠牲になるのは間違ってる」
子犬のようにクリクリの瞳は、いつもの可愛らしさとは裏腹に芯が通った勇ましいものだった。
冬の前の隙間風が冷たく感じない。
誰かにこんなにも想われるのは、もどかしくて温かい。
クスリと笑って、平助と目を合わせる。
「…仲間って言ってくれてありがとう」
出来るだけ優しく、出来るだけ笑った。
そんな私を食い入るように見つめていた3人。
「でもね、俺は犠牲になりに行くわけじゃない。
俺は俺のために行くんだよ」