拾われた猫。Ⅱ



フワフワと風が吹いて、木々と共に彼の髪を揺らす。



「俺は小さい時から忘れられない人がいるんすよ」


彼の頭に葉が乗った。


「でもその人は俺の事なんか眼中に無い。

それでも俺は絶対に忘れない」


頭を降って葉を落とす。


少しだけ見えた彼の横顔は、とても冷たかった。




「着きましたよ、雨さん!

って…これは…」


苦笑を浮かべる翔。


戸の南京錠は壊せなかったみたいだが、枠ごと壊して脱出したようだった。



「…予想通り…だね」

「これからどうするんすか?」

「勇のことだから、女王の元へ行っているはず」



次の言葉が分かったのか、「はいはい」と楽しそうに走り出した。


私もその後を走り出す。


さっきとは似ても似つかない背中。


今は翔のことを考えるのはよそう。


頭の片隅へと疑問たちを追いやった。



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