拾われた猫。Ⅱ
◇◆◇◆◇



短髪のくせっ毛が縁側で、風に揺らされる。


「寒ぃな…」

覇気のない声は動く気配が無い。


「平助、いつまでそうやってるの?」



藤堂平助が座る後ろの壁に寄りかかって、つまらなさそうに話しかけるのは、沖田総司だった。



「…こうやってたら、雨が何事もなかったように帰ってくるんじゃねぇかなって…。

近藤さんたちと一緒に、『今帰ったぞ』って」


浮かんだ微笑は哀愁を醸す。



「平助ってさ、何かある度に雨ちゃんの部屋の前にいるよね」


沖田総司は表情を変えずに、藤堂平助の横にしゃがみこむ。


「それってさ、慰めてもらえるから?」


ニヤリと冷たく笑って膝に頬杖をつき、藤堂平助を見る。


彼は自分の手に目線を落とした。



「…俺は、初めは雨を慰めたかったんだ。

けど、俺が慰められた」


両の手を絡ませて、何かを思い出すかのように必死に言葉を紡いだ。


「雨は俺が思うよりもずっと強くて、脆かったんだ。

そんなあいつを守りたくて…、笑顔にしたくて……。

…違う、俺が……俺が嬉しかったんだよ」


ぎゅっと手を握りしめて、沖田総司の方を見る。



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