拾われた猫。Ⅱ
「雨が笑うと俺が嬉しくて、俺が雨に会いたくて、雨に笑うだけで俺が幸せだったんだ。
…慰めて欲しかったっていうのは多分、…間違えじゃねぇ」
沖田総司は少しだけ目を見開く。
「でも、それも全部雨が好きだからだ。
だから、絶対渡さないし、失うのも嫌だ」
火の灯った瞳は彼の目を射抜く。
沖田総司はまたつまらなさそうな表情に戻り、「ふーん」と相槌を打つ。
「…どうでもいいけど、僕も渡す気はないから。
誰にも、ね」
遠い目をして、冷たく笑った。
その時、正面の小さな草薮が音を立てる。
2人は少し構え、正体が出てくるのを待つ。
「にゃぁあ〜」
出てきたのは赤眼の黒い毛並みだった。
「ノア!!」
藤堂平助は慌てて、ノアに駆け寄る。
「どうしたんだろうね」
続けて、ゆっくりと沖田総司が近づいた。