拾われた猫。Ⅱ
「お前も毎朝懲りねぇな」
溜め息と同時に、私に抱きつく少年の首根っこを誰かが掴んだ。
拘束が解けて、私は自由になる。
「左之、おはよう」
呆れ顔に挨拶すると、困ったように笑った。
「おはよう。
お前ももっと警戒心持てよ」
私の頭をポンポンッと撫でた。
私に抱きついてくる少年〝翔<ショウ>〟は間者事件以降に入隊を申し出てきた。
その時、彼は何故か私を気に入ってしまった。
初めて顔を合わせた時も、目を輝かせて抱きついてきた。
周りが唖然とした中で、左之が間に入ってくれた。
本人曰く、「雨さんは知り合いに似ていて親近感を覚えた」そうだ。
その事から翔は左之の隊である十番組に入隊した。
私も彼の毎朝の行為に警戒していないわけじゃない。
でも何故か抗い難い何かがある気がして……。
面倒見のいい左之も何だかんだ言って、翔の事を弟のように可愛がっている。
左之が止めに入ってくれるって信じてるから抵抗しにくいのか…?