拾われた猫。Ⅱ
眉間に皺を寄せ、じっと見つめる私から彼は目を離さない。
「雨さん、目覚めちゃったんすよね」
「何の話?」
「治癒能力の話っす」
ビクリと肩が揺れる。
翔は私の能力が目覚めた時に、屯所にすら居なかった。
なのに、なんで知っているの…?
「…知らなければいい事の方が多いし、その中にも知って欲しくないこともあるっすよね」
翔は足をブラブラさせながら、天を仰ぐ。
言っていることの意味が分からず、言葉に詰まっていると、翔は自嘲気味に笑った。
「…雨さんは全部もってるじゃないっすか。
ほんと、羨ましいっす」
「何の話をしてるの…?」
何が言いたいのか、何を告げられているのか、私には分からない。
翔は瓦礫から降りて、私の目の前に1歩ずつ近づいてくる。
「雨さんは、もう新撰組にいるべきじゃない。
貴女の居場所は、…帰らなきゃ行けない所がもっと大事な場所があるはずじゃないっすか」
私の居場所…?
……そんなの、新撰組以外どこにもない。