拾われた猫。Ⅱ
───『お前はいらない』
鮮明な記憶が私の心臓をドクンと跳ねされる。
けれど、何か忘れているような気がする。
それを思い出すことも躊躇われる〝何か〟が引っかかる。
「…俺の居場所なんか、1つしかない」
堪えきれずにその場を立ち去る。
どこに行く宛もない。
音がする方に行けば、勇達が居るはず。
どうか、皆無事で…。
その時、ふと外套の男を思い出した。
その瞬間足を止めて、無意識にあの人が浮かぶ。
私が暴走して、止められるとしたらあの人しか知らない。
あの足運び、自分に似た戦闘の型、どうしてもあの人と結びつけてしまう。
あの時は、私以外にこちらに来た人がいないと思いこんでいた。
でも、翔はこちらの世界に来た。
どうやって来たのかは分からないし、断定は出来ない。
もし、あの人がこちらの世界に来ているとしたら…?
風が木の葉を巻き上げて、私の頭の中をぐちゃぐちゃにして去っていく。
そんなまさか、ね。
駆け出した足はどこにいるか分からない彼らを探すために、動いていく。