拾われた猫。Ⅱ
「行くぞ」
スタスタと歩く彼に、慌てて小走りで追いかける少年の頭には、?が浮かんでいた。
「行くってどこに?
雨さんのとこっすか?」
「決まってんだろ」
当たり前のように言う彼に、少年は目を丸くする。
少年の記憶の中では、仕事において彼がそこまで優しいという覚えがなかったのだ。
「一緒に探してくれるんすか?!」
「…何そんなに驚いてんの?」
首だけ振り向いて、じとっとした目を向ける彼に、ポカンと口を開く。
「俺はてっきりもっと辛辣な言葉が飛んでくるのかと思ってました…」
「お前の中での俺はどんなのなんかね」
軽い殺気を感じて、言葉を飲み込む少年。
迷いの無い彼の足取りには、少女がどこに行ったのか、分かっているらしかった。
「急ぐぞ」
「分かってるっす。
お姫様をお迎えに行かなきゃ」
にっこりとした口元に似合わず、弧を描いた冷たい瞳は、「なんちって」と冗談交じりの言葉を落とした。