拾われた猫。Ⅱ
「あー、そだそだ!
雨さんに会ったらなんて言うんすか?」
頭の後ろで両手を絡める少年の言葉に、ピクリと肩を揺らす。
少年は何も言わないその背中をじっと見ていたが、やがて視線を空に向ける。
香月雨を追いかけているにも関わらず、ゆったりとしている足取り。
意識か、無意識か。
少年の視線は宙を見つめたまま、少し瞼を下げる。
「雨さん、なんて言うんすかねー」
「……」
「驚きますかね?」
「……」
「喜びますかね?」
「……」
「それとも…」
ニヤリと冷たくほくそ笑み、横目で前を歩く彼に目をやる。
「怒りますかね?」
声音はまるで何かを狙っているように、少し低く落ちた。
前を歩く彼の足が止まる。
そして風を切る音と、少年の首の前に手が止まる。
「…黙らせないと、黙れないか?」
少年は自分よりも背の高い彼の瞳を、じっと眺めていた。
そんな少年を彼もじっと睨んでいた。