拾われた猫。Ⅱ
◇◆◇◆◇


雨ちゃんがこの家に来て、2週間が過ぎた。


初めは体の自由が効かず、拳をゆっくり握るのが精一杯だったのに、徐々に回復してきている。


今では短い時間ではあるが、歩く姿が見られるようになった。



今日は庭先を散歩している。


そんな彼女を見ると少し嬉しくなる。



彼女の力は反動が強すぎる。

治した人数、怪我や病気の度合いによっては、死にたくなる程の苦痛を味わうことになると聞く。



ふと、雨ちゃんが私に気づいて微笑んでくれた。


元々中性的な整った彼女が笑えば、周りに花が咲いたように明るくなる気がする。



「雨ちゃん、体はしんどくない?」


雨ちゃんの元へ向かいながら問いかける。


「うん、これくらい平気。

いつもありがとう、美華さん」


普段口数の少ない彼女だけれど、お礼など大事な事はちゃんと真っ直ぐ伝えてくれる。


性格が一葉に似なくて良かった。



それに、新撰組…、雨ちゃんがこの世界に来た時、初めて迎え入れてくれたのが彼らで良かったと本当に思う。


危うかった彼女がここまで変わったのは、他でもない彼らのお陰だ。


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