拾われた猫。Ⅱ
暗器を着物の中に仕込むと、外に出る。
既に準備を整え、外套を被った一葉が翔を担いで待っていた。
担いでいる逆の手には、雨ちゃんの刀や小刀、暗器の入った袋があった。
「…準備せずに慌てて出るとはな。
ここから出ることしか考えてないとは、まだまだだな」
小刀と暗器の袋を私に投げ渡す。
刀は彼が自分の刀と一緒に腰に差した。
「刀はいいの?」
「俺と雨以外がこいつに触れない方がいい」
「翔も連れていくの?」
「こいつにも仕事を与える。
取り逃したのはこいつだからな」
悪態をつきながら、私たちは走り出す。
男の人だからと言うけれど、大の男一人担いでも普通に走るなんて…。
こういう所を見ると、一葉は人間離れしていると感じてしまう。
「あ」
「え?
何?」
不意に漏らした言葉を拾う。
「あいつ、ここの地形知らずに走ったんじゃない?
ウチに地図なんか無いしなぁ」
「……………………かもしれないわね」
「…殺し屋〝Noah〟の名前が泣くぞ」
呆れながら溜め息をつく彼に、少し笑みが零れた。