拾われた猫。Ⅱ
私の胸に頭を擦り付ける彼女の背中をそっと撫でてやる。
「ノア…。
まさか匂いを辿って来たの?」
クスッと笑う私をじっと見つめ、「にゃ」と短く鳴いた。
その場に座り、ノアを下ろすとそのままの姿勢で話を始める。
「ノア、お願い。
城まで連れて行ってほしい」
私の願いに呼応するかのように瞳が煌めき、煙が大きく上がる。
私登った木の3分の2程の大きさになったノアは、伏せてみせる。
上に勢いよく飛び乗り、「ありがとう」と首辺りを撫でた。
勢いをつけるように前足に力を入れて、走り出す彼女に振り落とされないように、フワフワな長い毛並みにしがみつく。
迷いの無い足取りと速度に、安心感を得る。
これならきっと、間に合う。
いや、間に合わせる。
ノアが切る風に負けないように、目に力を入れ、前を見据える。
嬉々として笑う梅姉さんと、不器用に微笑むお父さんの顔が脳裏をよぎる。
同時に赤木の顔が浮かぶ。
あの時のように無力ではない。
私の手の届く範囲で好き勝手はさせない。
ぐっと歯を食いしばる。
今度こそ……!