拾われた猫。Ⅱ


トシの目が一瞬奥を映す。


そして私から視線を外し、今までよりも大きな声で兵士達を威嚇する。

平助は苦い顔をしながらも、兵士達を睨みつけていた。



彼らに感謝しつつ、私は奥へと素早く、そして今までよりも慎重に進んだ。



「ノア、トシたちがもし牢に入れられそうになったら加勢してあげて」


走りながら彼女に話しかけると、じっと私を見て、理解したように逆方向に駆けて行った。


先にこっちに来た隊士たちが見当たらないという事は、牢に入れられてると思われる。


「佐之達は佐之達でこういう時じっとしてるたまじゃないからな…」


苦笑を浮かべながら、前から来る兵士達に気づき、サッと身を隠す。


このまま私が捕まっても終わり。

トシ達が牢に入れられても終わり。

もちろん一葉達に見つかれば終わり。



大きなハンデを想像すると、頭が痛くなる。


トシが「行け」と合図をくれた時の事を思い出す。


最初の頃は屯所から出れば殺されそうな勢いだったのに。


少し胸がむず痒い気がしていた。


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