拾われた猫。Ⅱ



兵士舎に何人の兵を募らせていたのかは知らない。

だけど、総司に姿を見られることなくそんな事をした後に、このクナイを投げられるのは一人しかいないだろう。


佐之の口振りからして、牢を開けたのは翔か。


私を連れて帰ろうとは思ってないのか…?

まぁ……、あと一人に聞けばいいか。



フッと息を吐く。



「美華さん。

私の声が聞こえる位置にいるよね?」



私の声に合わせて、近くの木陰からスッと気配が動く。

諦めたかのように次の瞬間には私の後ろに飛び降りた。


その場の全員がギョッと彼女を見る。



いつものような着物ではなく、くノ一が着るような服装で、私も少し驚く。



「気づいてたんだね」


困ったように笑う彼女は、向けられる視線を気にしていないらしい。


「気配は分からなかったけど、あの二人が動いてるなら…と思って」

「フフッ。

私は貴方達のような戦闘は向いてないけど、隠密は得意なの」


< 286 / 305 >

この作品をシェア

pagetop