拾われた猫。Ⅱ
兵士舎に何人の兵を募らせていたのかは知らない。
だけど、総司に姿を見られることなくそんな事をした後に、このクナイを投げられるのは一人しかいないだろう。
佐之の口振りからして、牢を開けたのは翔か。
私を連れて帰ろうとは思ってないのか…?
まぁ……、あと一人に聞けばいいか。
フッと息を吐く。
「美華さん。
私の声が聞こえる位置にいるよね?」
私の声に合わせて、近くの木陰からスッと気配が動く。
諦めたかのように次の瞬間には私の後ろに飛び降りた。
その場の全員がギョッと彼女を見る。
いつものような着物ではなく、くノ一が着るような服装で、私も少し驚く。
「気づいてたんだね」
困ったように笑う彼女は、向けられる視線を気にしていないらしい。
「気配は分からなかったけど、あの二人が動いてるなら…と思って」
「フフッ。
私は貴方達のような戦闘は向いてないけど、隠密は得意なの」