拾われた猫。Ⅱ
翔は…………何て言ってた……?
───『そういう酷いとこ、ちょー好きっす!』
まるで言葉の意味を知っているような言い方だった。
ザワザワと騒がしく木々を揺らす風。
私の解かれた紅い髪を乱暴に流していく。
───『〝初めの雨さん〟に戻ったみたいでしたよ』
彼の言う〝初めの私〟って……何?
不確定な思考が色んな事と一緒に頭の中を渦巻いて気持ち悪い。
もし……帰れるのなら、私はどうするのだろう。
不思議な程力の込められた両手を開く。
帰らなければいけない気がしていた。
考えを飛ばすように、頭を左右に振る。
不確定なことで考えるのは無駄だ。
一度だけの深呼吸をしてから、ノアを起さないように寝床についた。