拾われた猫。Ⅱ
小さな傷を作りながら戦う彼らの背中。
兵士の刀の切っ先が平助の額を掠める。
「くそっ…!」
絞り出したような彼の声が聞こえる。
片手で傷を覆う平助を一がフォローするけど、刀が肩を掠める。
いつもの涼しい彼の顔が歪む。
やめて。
ちゃんと今度は間に合ったと思ったんだから。
これ以上傷つけないで。
視線が赤木の方に向く。
気味悪く口角を上げる彼女に恐怖を覚える。
私の大事な人達を奪わないで。
傍にある桜牙を力の限り握りしめる。
───駄目だよ。
頭の中で声がする。
これは桜牙…?
───やっと君を見つけたんだよ、僕。
そうだね、前にも同じような事を言ってたね。
───君を失いたくないんだ。
桜牙がそう言った時、さっきよりも刀が重くなった。
私にこれ以上何もするなって言っているみたいに。
今私が飛び出せば、きっと皆私を庇いながら戦うのかな。