拾われた猫。Ⅱ


「ちっ」と言う小さな舌打ちと共に、サッと私の前から風が吹いた。


一瞬その一列だけ雨の音がやんだ。


そして兵士が数人、前の方で吹っ飛んだ。



唖然としているのは私だけじゃなかった。


新撰組の動きが完全にピタリと止まった。


そして一葉の放つ殺気と共に兵士の動きが完全に止まった。



そのまま振り返り、一葉はつまらなさそうに新撰組の顔を一人ずつ見ていく。



「俺が引くのが先か、全滅させるのが先かだな」


彼の言葉に、トシが「どういう意味だ」と殺気を返す。



「土方さんー、殺気は一葉さんじゃなくてあっちあっち」


ケラケラと笑いながらトシに言い放てる翔は本気で大物だ。

多分すごく怒ってると思う。

背中がそう言ってる。



「そうなれば分かる」


一葉は溜め息を一つ零した。



「何をやっている!!!

早くやってしまえ!!!!!」


赤木の遅れた怒号に兵士たちはハッとしたかのように動き始める。


彼らもそれに合わせて動き始めた。


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