拾われた猫。Ⅱ
あぁ…。
「……情けない」
雨に掻き消されそうな声を漏らす。
僅かだった力がスッと抜ける。
蹲った体を美華さんは私の名前を一つ呟きながら起こし、壁に寄せてくれた。
間に合ってなんかなかったんだ。
空に向けた顔に雨が公平に降り続く。
頬を伝って、雫はゆっくりと落ちていく。
「…菊さんに言ったこと、自分に返ってきたな」
乾いた笑いと共に出てくる。
何もしたくない。
何も考えたくない。
もうこのまま…眠ってしまおうか…。
「雨ちゃん!!!」
大きな声と一緒に私の両頬にバチンと痛みと温かさを感じた。
顔の前に大きくなった美華さんの顔。
その様子に目を丸くする。
「雨ちゃんが居なきゃ、一葉は局長さんを助けようと動かなかったのよ。
貴女は無力なんかじゃないし、貴女の心と行動が彼を助けたのよ」
怒っているような、悲しんでいるような。
彼女の表情に、何故か思考が落ち着く。