拾われた猫。Ⅱ
彼女が何を言っても、原田左之助は反応しなかった。
その代わり沖田総司が刀を抜いて彼女に向ける。
「総司っ!」
近藤勇の声は彼の耳にも届いていたが、刀を引く気配は無かった。
「今は殺しませんよ。
大丈夫です」
心配そうに見つめる近藤勇に笑いかけると、また菊の方に向き直る。
刀を菊の方に向けたまま、ゆっくり近づき、首元に添えた。
ひんやりとした容赦のない感覚に、菊の体がビクリと揺れる。
「フフッ、アハハハッ」
彼女の笑いには自嘲にも似た感情が見受けられた。
そして恐怖のない鋭い目が彼らを射抜いた。
「私は王家の血筋よ!
愛されるべき人間なのよ!!!」
悲しい叫びが谺響する。
彼女を見る目は憐れみ以外存在しなかった。
「お前の理論だと、こいつは愛されるべくして愛された人間だな」