拾われた猫。Ⅱ
聞き覚えなど微塵もない声が部屋の隅から広がった。
一斉に出入口に視線が移る。
外套を着た男の肩には探し人が背負われていた。
「こんばんは」
気配の無い外套の男に部屋中の者が神経を集中させる。
彼はそれを鼻で笑った。
「警戒するくらいならこんなに簡単に入らせんな。
…安心していいよ。
今日はただのお届け物」
紅い髪の少女をその場に寝かせた。
「雨…!!」
脇目も振らずに少女に駆け寄った原田左之助は、その腕に彼女を抱く。
「ふーん…」
外套の男はその様子を興味深い瞳で見ていた。
一見隙だらけに見えるこの男に苛立ちを覚える男がいた。