拾われた猫。Ⅱ




「止めときな、沖田総司」



声はいつの間にか、沖田総司の耳元を通過した。




「お前じゃ勝てない」



その言葉とともに背中をトンッと叩かれた。



弾かれたように彼に振り回した刀もヒラリとかわされる。




「へぇ、反応はいい。

…っ」



口元に余裕の笑みを浮かべる外套の男に後ろから殺気を感じ、身を翻して感覚だけで刀を避ける。




「斎藤一だっけ?

……ここは面白いね」



クスクスと笑う彼に、2人は殺気を放ちながら睨みつける。




「今日はこれくらいでいいや。

あ、言い忘れた」



片方の握りこぶしで手のひらを軽く叩いて、菊の方に足を向ける。



近くにいた井上源三郎が彼女を庇うように前に出る。




「お前さ、あいつに毒針打ったろ?」



彼の言葉に再び視線は菊に向く。



< 52 / 305 >

この作品をシェア

pagetop