拾われた猫。Ⅱ
「山崎!」
「はい」
土方歳三の声に、山崎丞はすぐに少女に近づいて容態を確認する。
「脈拍は正常です。
外傷も手の甲以外は特に」
緊迫した雰囲気が少しだけ柔らかくなる。
外套の男はフッと笑いながら、菊を睨みつける。
「あいつはちょっとの事では死なない。
どうにかしたいなら色々試してみればいい」
菊は彼に笑っているはずなのに、どこか怒りに似た感情を感じていた。
カタカタと震える肩を自分自身の腕で抱きしめる。
「じゃあ、俺は帰る」
無防備に背中を見せて、ヒラヒラと手を振りながら本当に帰っていった。
突然の事で一同はすぐに動けなかったが、原田左之助が少女を呼ぶ声でハッと我に返る。