拾われた猫。Ⅱ



「近藤さんは水汲んできてくれ!

原田は香月を部屋まで運べ。

山崎、お前は香月についていてやれ」



土方歳三の声に一斉に動き出す。




「平助、俺と一緒に来い。

あいつの部屋に布団を敷く。

……平助?」



近くにいた藤堂平助に声をかけるが、彼はボーッとしながら外套の男が消えた方を、目を見開いて見つめていた。



「おい、平助」




肩を叩くと、ハッとしたようにようやく土方歳三の顔を見た。



「…どうしたんだ?」




その様子を見ていた斎藤一が話しかけるが、「あぁ…」と歯切れの悪い返事を返す。




「藤堂くんも、もしかすると私と同じことを考えていましたか?」



神妙な面持ちで話に入ったのは意外にも山南敬助だった。



「山南さん、どういう事だ?」



斎藤一と土方歳三は顔をしかめる。



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