拾われた猫。Ⅱ
土方歳三は菊の方をチラリと見て、決断を下す。
「平助、総司。
お前らはあいつの部屋に布団を敷きに行け。
他の奴も色々と手伝ってやってくれ。
俺はあっちだ」
未だに震える菊を指さすと、彼を見ていた全員がコクリと頷き、動き出した。
ついでに井上源三郎に声をかける。
「源さん、菊さんを庇ってくれてありがとう」
「いやいや、良いんだよ。
私が一番近くにいたし、皆あの子に神経が行ってしまっていたからね」
眉を下げて笑う井上源三郎の肩をポンッと叩くと、震える彼女に近づく。
怯えた瞳で土方歳三を見上げる。
「あの男は誰…?
あの子のことを知っているの?
私……、殺される…」
神経衰弱を起こしかけている彼女は、座り込んで動く気力さえ残っていないようだった。
総司に刀を向けられた時は本当に斬るわけが無いとタカをくくっていたのだ。
だが、外套の男に向けられた殺気は今にも彼女を殺しかねなかった。