拾われた猫。Ⅱ
「どうして、どうしてあの子が愛されるの?!!
左之助様と出会ったのは私の方が早かった!
好きになったのだって……!!」
落ち着かせるために、土方歳三は彼女を自分の部屋に運んだ。
けれど、彼は頭を抱えていた。
菊は落ち着くどころか、彼女のヒステリーは留まるところを知らない。
机に頬杖をつき、体重を預ける。
菊の声は高くて、彼の耳を刺激する。
耳を塞ぎたい衝動を堪え、彼女の方を向きながらも瞼を伏せていた。
「私は王家の血筋なのよ!
それなのに、それなのに!
うっ……!」
小さな呻きと共に菊の体はバタリと倒れ込んだ。
土方歳三は菊の後ろの男を片目だけ開けて見ると、溜め息をついた。
「顔に似合わず手荒だな、山南さん」
土方歳三の呆れた物言いに、手刀をしまいながらクスリと笑う。
「もう夜も遅いですから、叫ばれると困るのですよ」
穏やかな口調で綺麗に笑う彼の腹の中は誰にも読めない。