拾われた猫。Ⅱ
「さ、左之?」
目を見開いたまま私を見つめていた瞳は、自分を呼ぶ声にハッとした。
すると、肩に置かれた手は私を引っ張った。
突然の事で何の反応も出来ないまま、佐之に体重を預ける状態になってしまった。
横から抱きしめられる体は少し体温が上がる。
「佐之…っ!」
恥ずかしくなって再び彼の名前を呼ぶ。
けれど、その腕は強くなるだけで私を離す気など無いようだった。
その時、私の部屋の前を通る総司がこちらを見て足を止めた。
2人と同じように目を見開いて、少し固まった。
「あ、あの…」
佐之と総司を交互に見る私。
やっと動き出した総司は部屋に入ると、私の後ろに回った。
何をするのか不思議に思っていたら、後ろから佐之を引き剥がすように抱きしめられる。
「雨ちゃん、調子はどう?」
何事も無かったかのように、後ろから私の顔を覗き込む。
無理矢理引き剥がされた佐之はキョトンとした表情を見せた。