拾われた猫。Ⅱ
菊さんの顔をじっと見ながら、ニコリと笑った。
「あれくらいはしなきゃ、気が収まらなかったから。
新選組馬鹿にされたし、殺されかけたしね」
クスクスと笑いながら、「軽い冗談だったんだけど」と付け加える。
ギロリと睨みつけるその瞳に表情を戻す。
「これで分かったでしょ?
あんたは王家の血筋だけど、それを盾にしても血筋であって王じゃない。
誰があんたを殺したって不思議じゃないんだよ」
泣くことを堪える表情は少し赤くあった。
私は追い打ちをかけるように、彼女の胸ぐらを掴み、目線が私の高さになるまで持ち上げる。
「自覚しろ。
あんたは血筋は良くても、ただの人間だ。
今回は〝あんた〟じゃなくて、〝あんたの血筋〟があったから皆が探したんだよ」
それだけ言い終わると、乱暴に彼女から手を離す。
その時、後ろから痛くない力加減で頭を小突かれた。
パッと後ろを振り向くと、左之が呆れながら笑っていた。
「お前も自覚しろ。
……ったく、心臓に悪いことしてんじゃねぇ」
今度は私の頭を撫でながら、優しく笑った。