イジワル社長は溺愛旦那様!?
(ええっ……ええーっ!?)
一瞬なにを言われたかわからなくなり、夕妃は呆然と神尾を見上げるだけ。すると彼は、ふっと笑って、夕妃の頬にはりついた髪を指で取り除きながら、ささやいた。
「なんともないとわかった今、俺にとってあなたはただの裸の女性なんですけど」
(……ああっ!)
言われてハッと気が付いた。
さっきまで無我夢中で忘れていたが、風呂からバスタオル一枚巻き付けただけでここまで連れてこられたのである。
とりあえず体の上にタオルは引っ掛かっているが、いまにも落ちそうだ。
「困ったな……これは当然のごとく、お誘いありがとうございますとお受けしていいのでしょうか」
神尾はどこか楽しげに、かろやかな口調でささやいて、そして両手で夕妃の頬をはさみ、こつんと夕妃のおでこに自分の額をくっつける。
「あなたにキスしたい。いやなら俺を突き飛ばして逃げてください」
(き……キス……!?)
「逃げないんですか? 今度は頬じゃないんですよ。あなたのこの可愛い唇に、キスしたいって言ってるんですよ」
そして夕妃の唇の上を、そっと親指で撫でた。